小規模宅地等の特例できる取得者の一つ 生計を一にする親族とは?

2015年12月2日

被相続人と生計を一にする親族が居住している土地をその親族が取得した場合の小規模宅地等の特例の適用についてご説明いたします。

 

1位置づけ

生計を一にする親族が居住している居宅については、その「居住」を保護するために、同居親族の居宅と同様に特例があります。

平成27年1月1日以後の相続や遺贈によって取得する場合は、一定の要件を満たした場合には330㎡を限度に、土地の評価が80%減額になります。

 

2.居住継続要件と所有継続要件

この特例は、生計一親族が、相続開始前から相続税の申告期限まで引き続きその家屋に居住しかつ、その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで引き続き有していることが要件です。

万が一、親族が申告期限前に死亡した場合には、死亡の日まで所有、かつ、居住していることが要件です。

なお、生計一親族が居住していた宅地等を被相続人の配偶者が取得した場合には、無条件で特定居住用宅地等に該当します。

 

3.「生計を一にする」とは?

生計を一にするとは、同居している必要はありません。日常生活を同じお財布で営んでいることをいいます。

国税通則法基本通達に は、 “互いに助け合って日常生活の資を共通していることを言う。同居していない場合でも、常に生活費等を扶助しているときはこれに該当する。同居していても、互いに独立して日常生活の資を共通していない場合は該当しない。”とあります。

 

小規模宅地等の特例の適用の際の生計一親族の判定は、被相続人と親族の所得の大きさ生活費の送金状況などを検討して、生計を一にしていたかどうかを判断することが必要です。

想定されるケースとしては、1つめが、親の所有する住宅に居住している子が、親の生活維持のための送金をしている場合、2つめが、親の所有する住宅に居住している子が親に生活費を送金してもらっている場合です。

生活費の金額については特に基準はありません。しかし、被相続人と親族にそれぞれ十分な所得や財産がある場合は、通常、別生計となるため生計一親族とはなりません。

「生計一」の状態を作り出すためだけのテクニックとして、十分な所得がある親や子にあえて送金するような場合は認められません。

「居住費、食費、光熱費その他日常の生活に係る費用の全部又は主要な部分を共通にしていた関係にあった」ことが必要と解されています。

 

4.最後に

超高齢社会を迎える今後の社会では、この規定の利用価値が高まると思われます。

完全分離型の二世帯住宅について、区分所有していたために、被相続人と別の階(被相続人と別の区分を所有)に居住する親族が、同居親族と認められなかった場合など、この生計一親族の特定を検討する必要があると思います。

 

なお、実際の適用の有無は個々の事情によって変わってきますので、上記のような時に必ず生計一親族と認められるということではありません。

事前に税理士にご相談されることをお進めいたします。